新型iPhoneはなぜどんどん大きくなるのか?
先日新型iPhoneの発表がありました。
www.apple.com
その報告を簡単にまとめると以下のようになります。
- 新型iPhone XS,iPhone XS Max,iPhone XRの3種類
- サイズは5.8インチ,6.1インチ,6.5インチの3つ
- 値段は一番安いXRが84800円(税別)
- ホームボタンの廃止→指紋認証の廃止
- イヤホンジャックの全滅
- CPU性能、耐水性、カメラ性能が向上
- SE2は登場せず
まあだいたいこんな感じです。さて、どうでしょう。みなさんがどう感じるか知りませんが、私はぶっちゃけ、微妙!! って思いました。
正直言ってこんなに大きくされてもポケットにも入れづらく、重くて疲れる上に片手で操作できないとせっかく今まで感じていたスマートフォンのスマートさが大きく損なわれていると感じます。
また値段も知らず知らずのうちにどんどん上がっていってもはや一番安いモデルでも税込みで9万円近く。自分はキャリアの分割払いではなくSIMフリーを一括で買うのでなんというか金銭感覚的に非常に重いです。
そして加えてホームボタンの廃止。それはまあ慣れも含むものなので使う前から批判するのは良くはないと思いますが、それにしても指紋認証の廃止は正直大きいですね。今後は顔認証に切り替えるという話ですが顔認証はマスクをつけていると反応しない、という問題や、雑に机の上に置いてロックを解除する等がしづらくなるので純粋に上位互換と言うよりは使いづらさも感じますね。あと、あんまり真っ黒なスクリーンに映る自分の顔をまじまじと見せられたくないというのも……。
更にはイヤホンジャックの完全廃止。SE2が出てそっちではイヤホンジャックが復活する、というような僅かな期待を抱いていましたがそういうことはなく完全に討滅されてしまいました。ガーン……。ただでさえこわれやすいという問題のあるライトニングケーブルに完全に依存して、その上で充電しながらの使用も専用の機器(結構高額)が必要で、さらには既存のものを使うのにもコネクタ(付属品)が必要という、なんというか、ちょっと、だいぶ、面倒かなって思います。これについては代替案としてBluetoothイヤホンという手があって、これなら充電しながら使うとかそういう事ができていいのですが、このBluetoothイヤホン、イヤホン自体に毎日充電が必要なんですよね。ちょっと面倒くさい。あと音質にこだわるとなるとやはり少し劣るかもしれません。
というわけでCPUの向上とか防水性とかそういう純粋にいい部分もありますが個人的にはなんというか、期待していたのと違う感がしますね。というかココ最近のiPhone周りはハード面もソフト面も含めてなんというかこう、違うな、と思う面が多いです。
と、いうわけでなぜ、新型iPhoneは望まざる方向へと進んでいくのか、ということについていろいろと書いていきたいと思います。
1. サイズと値段について
まずは改めてデータを見ていきましょう。サイズについて表にすると以下のようになります。
XS | XR | XS Max | |
---|---|---|---|
サイズ | 5.8インチ | 6.1インチ | 6.5インチ |
値段(税別) | 112,800円 | 84,800円 | 124,800円 |
値段(USドル) | 999ドル | 749ドル | 10999ドル |
値段はすべて最安値、容量64GBについてです。
因みに過去のiPhoneの値段とサイズも一応見ておきましょう。
SE | 8 | 8 plus | X | |
---|---|---|---|---|
サイズ | 4インチ | 4.7インチ | 5.5インチ | 5.8インチ |
値段(税別) | 39,800円 | 78,800円 | 89,800円 | 112,800円 |
値段(USドル) | 399ドル | 599ドル | 699ドル | 999ドル |
サイズについては6sと7は8と同じ、6s plusと7 plusは8 plusと同じです。値段はSE以外は64GBのものです。
見ての通り着々と巨大化と高額化が進んでいますね。今回出た新型はすべてSEの1.5倍程度のサイズになっておりもはや普通の人には片手での操作が難しいレベルになってきました。
正直Xでもデカっておもっていたのでそのサイズを超えてくるとは思いませんでした。昔から冗談のようにどんどんでかくなるみたいな話はありましたけど実際ここまで大きくなると思いませんでしたね。ジョブスのころから巨大化路線でしたからジョブスの死はあんまり関係ないAppleの傾向なんでしょうね。
2. 理由は日本とアメリカの感覚の違いな気がする
結論から言うと理由は日本とアメリカの感覚の違いなのかなって思います。具体的にはアメリカの会社であるAppleは多分あんまり日本ユーザーのことを考えてなさそうです。というのも巨大化にしろ値上げにしろその他のいろいろなアップデートにしろアメリカ的目線でいうとさして改悪ではない、というか普通に合理的な面が多いんですよね。それを見ていきたいと思います。
2.1 スマートフォンの使い方の違い
一番指摘されるのはこれなのでしょうか。日本人にとってのスマートフォンって自分の周りを見る限りではぶっちゃけLINEとブラウザとソシャゲとSNSのためのものという感じがします。 正直自分みたいな人間だと、なぜスマフォに高スペックを求めるかと言ったらゲームがサクッと動いて欲しいから以上の理由ってあんまりないんですよね。そしてそのためなら別にでかい必要とかまるでないんです。普段遣いが大事なんですから手のひらサイズであることが一番重要です。でかいと寧ろ不便です。
実際日本の家庭用PCはほとんどは年賀状のためにしか使われていない、みたいな話も昔はありましたけど、日本人のそういうITの使い方っていうのは割と偏重しがちなガラパゴスなのかもしれません。ガラケーなんて言葉はまさに的確でした。
しかしスマフォの使い方って結構多様化していると言うか他にも色々あるんですよね、たぶん。
具体的に大きな差になるのは動画視聴の有無でしょう。多分画面のサイズ等が最初に気になるのはこの動画視聴なのではないかと思います。
皆さん動画をスマフォで見ますか? どうでしょう。たぶん日本の携帯料金のシステムって通信量が月5GBとか何GBとか決まってるんであんまり見ないんじゃないかと思います。動画ってアホみたいに通信量食うので1時間分くらい動画見ちゃった日にはそれ以降通信速度低速生活まっしぐらです。
だから普通は動画ってWi-Fiのある職場やら大学やら自宅やらで見るのではないかと思います。そういう場所ならわざわざスマフォで見なくてもPCやタブレット等があるのでスマフォで見る必要そこまでないんですよね。だから動画をスマフォで見るってケースはあんまりないんじゃないかと思います。
で海外ではどうなのか? どうでしょう。1つの違いとしてフリーWi-Fiの普及率というものがあるのかもしれません。日本って都心ですらあんまりフリーWi-Fiってそんなにはありません。海外は日本よりはやっぱりフリーWi-Fiは多いみたいです。オリンピックに向けてこの辺が日本でどうなっていくのかはかなり大きな課題になるでしょう。
とにかくフリーWi-Fiがたくさんあれば動画を見るハードルはぐっと下がります。もっとも通信速度の関係があるので具体的にどれくらい見られるかと言うと難しいところですが、そういう趣向の違いはあるかもです。このフリーWi-Fiの普及度って多分デザインに結構影響している気がして、例えば新しいiosアップデートでWi-Fiが勝手に起動する誰得機能が追加されましたが、日本においてはゴミWi-Fiにパスワード要求されてばかりで単に邪魔なだけですがフリーWi-Fiが多ければ多少は役に立つのかもしれません。
他にもカーナビとして使ったり電子書籍を読んだり。シューティングゲームなんかも画面の大きさで勝率が変わったりします。そういうわけで普段の使い方の多様性による差は多かれ少なかれあるのかもしれません。私は正直動画とか全然見ないので小さいままでいいんですけどね(ガラパゴス並感)。
2.2 体の大きさの違い
次に体の大きさの違いというのものある程度あると思います。向こうの人たちは少なくとも日本人寄りは平均して大きいです。そうすると寧ろ小さい画面はまどろっこしいこともありますし指の届く範囲にしても日本人なんかよりは広いでしょう。つまり日本人ほどには大きすぎる! という感覚になりづらいところがあるかもしれません。そういうのって割と気づかないですが大きな差ですよね。
3. 金銭感覚の違い
次に値段がなんでこんな高いの? という話を見ていきましょう。
3.1 iPhoneは高級品
まず日本のiPhoneのシェア率は世界的に見ても最高です。
【2018】iPhone iOSとAndroidスマホのシェアを日本国内と国別で比較! | Apple Geek LABO
見て分かる通り、世界で見ればios11.5%に対してAndroid87.8%と差はあまりにも歴然です。ところが日本だと、66.2%対33.1%と完全に逆転のダブルスコアです。日本人は普通にスマフォの代名詞のようにiPhoneを使いますが、これはかなり珍しいんですね。アメリカは比較的iosのシェア比が大きく57.9%対40.5%のようですが、それでもAndroidのほうが多く、日本のようなダブルスコアというのはやはり際立っているというのがわかります。
実際国によっては高級品という認識のところが多いです。AmazonCEOのジェフ・ベゾスはiPhoneを低価格にしてシェア率を席巻しなかったAppleはアホだみたいな話ししてましたけど、とにかくiPhoneはやっぱり高級品なんですよね。
そういうわけで高級品らしい値段というところはまああるのであってまあ普通はもっと安いAndroid買えよ、みたいな、そういうところがあるのかもしれません。
3.2 アメリカの物価と日本の物価の違い
日本とアメリカではビッグマックの価格が違います。日本では350円に対してアメリカでは5.28ドル、円に直すと580円程度です。これは有名なビッグマック指数というやつですが、要するに物価が違うということですね。もちろん諸々の背景の違いはありますが(明らかにアメリカのビッグマックは日本よりサイズが大きい等)なんにせよアメリカのほうが物価が高いというのは事実です。加えて言うならここ30年近く上がり続けています。
一方日本はどうでしょうか? 1980年からは上がって入るもののここ十年程度はほぼ横ばいです。
このことが意味するのは値段が上がるというのはアメリカ的には自然なことだ、ということです。他のものも等しく値段が上昇していき、だからiPhoneの値段だって当然上がるはずです。そしてアメリカの価格をそのまま日本版にすれば日本でも上がります。現地生産現地消費型の商品ならこうはなりませんがもとからワールドワイドな商品である以上ある程度こういう事が起きるのは不思議なことではありません。日本人が台湾なんかに旅行に行くと、物価安くてお得で助かるな~、なんて思いますが、その逆が日本とアメリカで起きてるんですね。日本に出稼ぎの人が来る理由の1つもこれですね。まあ最近は少し出稼ぎの人も減少傾向にあるみたいで労働力不足の話が度々話題になりますけど。
とにかくそういうわけでここの経済的な感覚の違い、インフレ経済と安定(停滞)経済の違いがあります。物価が上がると"基本的には"お給料も一緒に増えていきますから、日本人ほどの「うっわたっか!!」感はないのかもしれません。これは円安円高とは少し違った話ですね。
3.3 おま国現象なのか?
おま国現象っていうのは要するに「国籍贔屓」ですね。steamとかで海外のゲームなんかを買う人とかは日本だけ不当に価格が高かったり変えなかったりする事があるんですが、そういうことです。
先程iPhoneの価格はアメリカのインフレ経済に合わさってるからまあ妥当的な話をしましたがそれとは別に日本の売値は少し割高なのは事実です。
純粋に今のドル円は111円/1ドルですからそれを当てはめると999×111で、11万889円程度。若干高いんですね。
でもこれはまあ実はそうでもないところがあって色んな国と比較すると為替レートに対してならそんなに高くはないです。
How much Apple's iPhone X costs around the world: CHART - Business Insiderより
先程のBMI(ビッグマック指数)と合わせて考えても日本はビッグマック296個分に対してアメリカはビッグマック207個分、ドイツは283個分とオーストラリアは249個分とまあアメリカはたしかに安いもののすごく不当ではないでしょう。
日本ばっかり不当に高い! みたいなことはないのかもです。だからおま国現象を語るには及ばないでしょう。
4. 別に出羽守になりたいわけではないのだけれど
というわけで色々書きました。個人的に書きたかったのは物価の違いについての部分なんですけど随分な大風呂敷になってしまった気がします。
こんなふうに書くと「海外"では"当然~」とか言い出す鬱陶しい「ではではマン」、通称「出羽守(でわのかみ)」のようになってしまったみたいでなんだか気恥ずかしいですが別にこれって海外が優れてるとかそういう話ではないので別に問題ないかな、と思います。単純に海外と感覚が違うからこういうことが起きているんだよっていうだけの話です。
というか書きますがAppleはもう少し日本を尊重してほしいですね。こんだけシェアがあって市場があってファンのいる日本をちょっとないがしろにし過ぎなのではないでしょうか。例えばtouch IDをface IDに変えるという話、サングラスの国アメリカ人は気づかないかもしれませんが、マスクの国日本では結構困るんですよね。以前こんなツイートを見ましたが
目は口ほどに物を言う日本人はサングラスを着用されると心が読めず怖くなる。歯科矯正大国の米国人はマスクで口を覆われると感情が読めないので困惑する。
— Hideshi Hamaguchi (@hideshione) 2017年5月9日
その結果、
日本の顔文字は、目の表現がポイント ^^;
米国の顔文字は、口の表現がポイント :^)
になっているわけです。
なんにせよ日本はマスク大国です。サングラスというのはそんなには見ません。そしてどうやらface IDとかいうやつ、サングラスには対応できるけれどマスクをつけてるとあんまりうまく機能しないみたいです。この辺も少し感覚の違いが出てるのかもしれません。
もっと日本を見てくれ!!! そう思うばかりです。
5. なぜこんな記事を書いたのか
書きたくなったからなんですけど、あえて言うととやっぱり今だにスマフォでゲームをやるならiPhoneが最適解だと思うんですよね。AndroidでFGOとかやるとカックカクですっごいやりづらいし、オダチェン時間かかり過ぎでアーラシュの使い勝手もかなり落ちます。ソーシャルゲーマーにとっては事実上iPhone以外の選択肢がないのです。そういうわけでiPhoneの動向ってやつはなんやかんやすごく大事ということでiPhoneについていろいろと書いたわけです。自分はiPhone SEを使い続けてきましたが、価格面性能面でもマジで最強のiPhoneだったなって思ってます。なので今後もバッテリーを変更して使い続けていこうかな、と思ってますしSE2が出たら、絶対飛びつきたいと思います。本当にそこは期待しているのです。ですからそういう意味で、なんかこういろいろと言いたくなって経済の話まで持ち出したりいろいろして書きました。
前にも書きましたがなんやかんや日本という市場そのものはAppleにとっても本来決して無視していいものではないはずなので、もう少し日本の感覚に寄り添った商品が出てきてくれることを期待したいですね。