優雅に華麗に大胆に!(FGO攻略ブログ)

イシュタル召喚記念にブログ始めました。FGOについて書いていくつもりです。

俺ガイル5巻まで読んだ感想

 随分と前から色々な人に勧められたラノベ作品があった。高校の友人から、Twitterの知り合いから、謎の外国人から、バイト先の塾の生徒から、Amazonのおすすめから、あらゆるところで顔を覗かせては手招きをするやたら人気なラノベ。なんとなく興味はあれど、あらすじが面白くなさそうに見えたという理由で敬遠し続けていた。自分は基本的に捻くれてるので、ご都合主義の香りを感じる作品はどうしても読もうと思えない。ましてや美人教師から強引に美少女と2人きりの「お悩み解決部」に入れられて生徒の悩みを解決するなんて、そんなご都合主義の権化のような設定をちらつかされてしまっては、「はぁーん、そういう舞台設定なら物語の進行もしやすい、次から次へと美少女キャラ出せる上に事件の解決を物語に設定できるから便利だし、メインヒロインわかりやすいし、高校っぽいしどうせそういうやつなんでしょ?」とヘソを曲げとても読めるメンタルにはならなかった。僕が求めるのは常に混沌と偶然、そして同時にギリギリ憧れることができる程度の再現性のある高校青春ものだった。そんなご都合主義の舞台をスタート地点にされてはあまりにも特別すぎて感情移入できないのが常だろうとそう感じていた。
 しかし転機が訪れた。自分の本棚が辛気臭すぎた。ふと本棚眺めるとそこには「白痴」「檸檬」「赤と黒」「山の音」「人間失格」専門書専門書専門書専門書……あああ! なんか辛気臭い!! もちろん傑作だが、青春のせのじもなく、全体的に燻したような色合いの本ばかり! なんでこんな陰鬱としてるんだ僕は! もっとこう幸せな気分になりたい!! 文学は好きだけど別にそんなに高尚な人間じゃないしどう考えても僕の身の丈に合ってない!! と突然思った。そしてそんな時ふと本棚に青く光る文庫本が置いてあるのを発見した。青といえばブルーバックスみたいな本棚にあってその文庫本は忽然とした輝きを感じた。「こ……これは!」それこそが友達に勧められたのをある時ブックオフで思い出して、セールじゃんと気まぐれで買ってみたはいいけどいざ読もうと思うと謎の反骨精神から敬遠し続けていた「俺ガイル」1巻だった。(あと、意味不明のプライドもどきから「長い系のラノベタイトルはすこれない」とか変な意地もあって放置してたのある)
 これこそ僕の求めていた青春の輝き! 思えばなんか「やっはろー」って挨拶だけ元ネタ知らずに使ってたのバツが悪いし、友達に勧められてたし、まぁ大好きなギャルゲーってみんなご都合主義的だし、これ読むのいいんじゃね? そんなこんなを感じて、僕はその本を読み始めた。

 ……読み終えた。なるほど。こういうものか。これが友人が「かなり面白いよ、読むなら全巻貸すよ」と布教体制に入り出し、Twitterの知り合いが「最近のラノベでダントツに面白い」と持て囃し、外国人の友達が「こいつが俺の推しアニメだぜ! 最高だろ?」と突然推されだし、塾の生徒が「いろはすかわいい……😍」とテンション上がり出し、おまけにはネットの知り合いが「俺は人生で選択肢に迷ったら、八幡(主人公)ならどうするだろうか、を考えてる」とか言い出す魔境の作品だったのか。なるほど。それにしても最後のエピソードは強烈すぎる。彼は元気してるのだろうか……。

 というわけでそんなこんなで気がついたら全巻読むことになっていた「俺ガイル」というラノベの感想を書いていこうと思う。
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全巻読むつもりはあんまりなかったのだけど、そういや塾の生徒が好きだった「一色いろは」って何巻に出てくるんだ? そこまで読みたい、って友達に軽い気持ちで尋ねたら「7.5巻」とか言われて長い長い旅の始まりが約束され、ってか7.5ってなんだ……? 、おまけにその友人に翌々日に「全巻貸すから会おう」と呼び出され13冊その場で手渡されてしまい全巻読むことが確定した。ここまでしてもらったのなら僕としても正面から向き合わざるを得まい。現在5巻まで読んだ。結構なペースで読んでるんだけどまだ半分にも達してないという事実に驚きを感じる。流石長期連載……。というかまだ完結してないのか! 最終巻3月19発売? よしそれまでに読み切ろう! 

 さてさてというわけで、「俺ガイル」について書いていく。正式タイトルは「やっぱり俺の青春ラブコメは間違っている」。タイトルの通りやや王道からの脱却を意識したタイプの学園系ラブコメ作品。王道ラブコメ展開が主人公とヒロインの曲がり具合で崩れていくというような感じだ。どうやら「はまち」という略もあったらしいが、なんか炎上系のまとめブログみたいで風評被害を被りそうだし「俺ガイル」で良かったんじゃないかと思う。
 あらすじを説明するのがしんどいのでなんか説明するよあなしないようなで書いていこうと思う。
 まず第1巻について。第1巻の読了感は比較的良好だった。僕は1巻で起承転結のないラノベ、シリーズとして最初から設計されたラノベ、例えば1巻のタイトルの下に①と書いてあるタイプのラノベがどちらかというと好きじゃないのだが、本作はしっかりとうまく落とし所を作り、終わり方も気持ちよく、とても好印象だった。タイトルで締めるのは王道ながら気持ち良さがあって良い。ある程度続編を意識してあってもとりあえず完結の形はとってあり、「あんまり売れなかったら続かないかなー」みたいな緩さを感じた。
 そして5巻まで読んで、内容はまぁ言ってしまえばそんなに無いようなもので、テンプレ的ラブコメシチュエーションに主人公やヒロインの捻くれた見方と空回りを楽しむというような雰囲気だと思った。
 このラノベの大きな軸は「高二病」と「スクールカースト」。あえて分析的に書くなら、「通常多くの学園ラブコメスクールカーストという現実から一切切り離され、自由奔放に行われる。ところが本作はそうではなく学校特有のあの陰湿で、権威的で、上下関係のある、パワハラめいた、スクールカーストを前面に押し出し、主人公をその最底辺に位置づけることで、他とは違うリアリティと共感を与え、また主人公に多少なりとも気持ちを代弁してもらえたような喜びとある種の尊敬、カースト最底辺でもワンチャンいける、みたいな希望を与える構造になっている」のかもしれない。わからない僕はそう感じた。
 例えば「ハルヒ」を考えてみると、冷静に考えてあんな自己紹介出来ないし(したやついたけど)、バニー姿でビラ配りなんてことは出来るわけがない。したらカーストタワー・オブ・テラーである。作品においては往々にしてあくまで孤立はありえても、阻害されたりするということはそんなにはない。モブキャラはみんな心優しく、大人である。
 ところがもちろん現実は違う。学校という空間はある種閉鎖的であり阻害的だ。痛いとこと言ったら人権がすり減るし、趣味というのはある程度隠して過ごすものだ。寛容で成熟した社会というのそんなには多くない。そういう暗い部分を、マイルドではあるがしかし誤魔化さずに書いているのが本作だ。間違えて告白して酷い目にあうとか、自分だけパーティに呼ばれないとか、席が隣になった女子が怒り出すとか、そういう誰もが経験する(するよね?)苦い記憶を当然主人公も共有している。だから、親近感が湧く。
 そして、もう一つは皮肉のセンスと無駄にある雑学教養の類がセリフそのものに面白さを感じさせ、主人公の言動も1つのモチベーションとして読み進めることが可能になる。「死んだ魚のような目をしてる」と言われて「DHA豊富そうでいいですよね。賢い感じしますか?」とかそんな感じ。つまりは、いかにも高二病。世間の愚かさと欺瞞を呪い、自分の正しさを信じて疑わない! ポッキーアンドプリッツの日はグリコの商策だし、バレンタインデーはチョコレート会社の陰謀! 乗ってるやつはアホ! 青春なの下に愚かさをごまかすアホどもバーカバーカ! 俺がそういうバカなことしないのはわかってるからだし! 誘われないからじゃないもん! ……そんな感じだ。無邪気に遊べない、世間が見えてきたことで変に俯瞰的になってしまう屈折した気持ち、そういう感情を前面に押し出す。それは、ある種のヒーロー像にすらなりうる……のかもしれない。
 そしてまぁそれらがうまくハマっていて結構面白かった。森博嗣にハマった時ミステリ展開よりもたまに主人公のいう小言とか、主人公の賢そうな世界観みたいなのが好きだったのだけど、ある意味主人公の皮肉的見方はそれに近い。あとネットスラングがめちゃくちゃ多い。なんというかそういう小ネタみたいなのが楽しいのだ。自分は大抵の元ネタは察知出来た気がしたけど、それにしても全部できてるかは自信が無い。とにかくそれほど小ネタスラングが多い、2ちゃんコピペ、プロント語、ギャルゲのセリフからアニメの名言まで割と幅広い。こういう小ネタは気づけるとまぁ嬉しいし共感できるもので(失敗すると痛々しいのでこの手の文章を書くには細心の注意がいるけど)、うまく混ぜられてるようなので割とそういう意味では読みやすい。
 あとこの作品は「はがない」、「僕は友達が少ない」を意識して、というかそれをベースに渡航(作者)バージョンに書き換えたみたいな作りになってると思った。奉仕部と隣人部、ゆきのんと夜空、小町と小鳩等々かなり似てる部分が多い。ある意味テンプレをあえてずらす面白さというゲームの2周目的楽しみ方とも取れるのかもしれない。例えば西尾維新の「クビキリサイクル」はたぶん森博嗣の「すべてがFになる」をある程度意識してそうだしそういう作者の味付けで書き直す、みたいなのは割とあるのかもしれない。結局創作の世界は面白ければ良いのでモチーフを色々見つけるのって大事なのかな。デュマみたいでかっこいいよね。

 というわけでまぁ感想としてまずはこんなところか。貸された本とはいえサクサク読み進められたのは文章力とネタの面白さの力だと思った。悪かった点としては……まぁ、なんだろ。まぁ言うまでもなくご都合主義的だし、あとネタが楽しめないと、高二病精神をしっかり患ってないと楽しめないのかな、と思った。あとはまぁ、いわゆる「ストーリー」としての展開が現状あまりないので、もうすこし起承転結があればいいのかな、という感じ。割と日常ものに近い雰囲気で、もしこのまま続くのなら少し退屈しちゃうかも。……あと!! なんかぼっちで仲間だと信じてたのになんか急にモテ始めてるのおかしくない!?  僕だって同じような経験をしてるのにモテなかったぞ!! なぜだッ!!! おかしい!! ギルティッ!
 それにしてもまぁ多くの人が勧めるだけあって面白かったと思う。今後の展開にとにかく期待したいという感じですね。以上5巻までの感想でした。
 ……ちなみに僕は雪乃ちゃんが好きです!!!!! あの自分の正しさを疑わない圧倒的強さ! 凛々しさ! 全くデレないオーラのある雰囲気! 学があってしかも理系というところがなおなんか嬉しくてgood(自分が理系なので)! なんというか、ほんと……よきですね。そしてあとツインテ可愛い!! 最近少しデレ始めて雪解けに地球温暖化を感じたり、家族関係が苦手という弱点が出てきたりするけど、そういう完璧さの裏にある一面みたいなのも良いよね。これからが楽しみ。しかしまぁでも、ゆいちゃんも可愛いから、ここからはなんと言うか展開が難しいよね。どうなるんだ……。
 そういうわけで八幡の漢気に期待だ!

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おわり